きよか食堂

南大隅町の食堂はとにかく地元の人々に親しまれ、愛されている。創業50年以上続く店が数多く残っていることが何よりの証だと思う。諏訪神社からほど近い「きよか食堂」は石走さんご夫婦が50年以上続けている街の老舗だ(昭和46年創業!)。絞り込まれてたメニューに味を追求する店主の職人気質を感じる。聞けば創業以来ずっと変わらないのだとか。


今回注文したのは特大も選べるラーメン。なみなみと注がれた艶々の豚骨スープが食欲をそそる。食べ応えのある太めのストレート麺に、スープは飲み干したくなる優しい味だ。きよか食堂は夜まで営業している数少ない食堂。長年数多くの町民の空腹を満たしてきたのだろう。これはもう『ふるさとの味』になっているはずだ。幸せな店だなぁ。
ごちそうさまでした。気持ちも満たされる一杯だった。
追記:
飲み干すと丼の底に「きよかラーメン」の文字が。奥さまの名前が店名の由来のようだが、食堂ではなくラーメンなのはなぜだろう…?今度訪れたら寡黙な店主に勇気を出して聞いてみようと思う。

- きよか食堂
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住所:大隅町根占川南3308
電話:0994-24-2359
駐車場:あり
営業時間:11:00〜19:00
定休日:無休
立神食堂

佐多岬に向かう国道269号は『ハイビスカスロード』という愛称で呼ばれていた。本土最南端の佐多岬に向かうこの道を南下すると、道の両脇に南大隅町の町花でもあるハイビスカスが数多く花を咲かせているからだろう。その道中にポツンと一軒ある立神食堂は昭和47年創業。立神さんご夫婦が営んでおり、現在の店主義高さんは二代目だ。(まったくの余談だが『二代目』という言葉の響きには個人的に非常に憧れている)
昭和歌謡が流れる昔ながらの落ち着いた風情がとても心地よい店内。(ちなみに店主義高さんはジャズもお好き)メニューはカツ丼、ラーメン、ちゃんぽん、ホルモン定食など。麺類は大サイズも選べる。一番人気の『カツ丼(らーめん小)セット』をいただくことにした。
お二人で切り盛りされているためメニュー表には、混雑時は提供に時間がかかるお詫びが書かれていた。そんな心配は皆無なほどの手際で運ばれてきたが、なによりその心配りが嬉しい気持ちになる。

「小ですよね?」と思わず目で確認してしまう食べ応えありそうなボリューム。麺が伸びないようラーメンからいただくことに。豚骨と鶏ガラのうまみが詰まったスープがベースの塩ラーメン。コクのある味わいでカツ丼とあわせて食べやすくするためあえて薄めに調整されているように感じた。料理にも心配りが細やか。

カツ肉はすぐに噛み切れるほど柔らかく、肉汁が口いっぱいに広がる。追いかけるように米を口に運ぶ。そしてまた肉を…。箸が止まらない。
「うちは昔ながらの懐かしい味を守ってるんだよ」
店主の義高さんが調理の手を休めて話してくれた。
旅先での食事の思い出は、その旅の思い出と繋がって記憶に残る。きっとそのことを分かっているからこそ、同じ味を守り続けているのだろう。そしてお客さんもその味を思い出と一緒に愛してくれているに違いない。



- 立神食堂
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住所:南大隅町根占辺田1735
電話:0994-24-2795
駐車場:あり
営業時間:11:00〜14:30/17:00〜21:00
定休日:水曜日
ばぁばカフェ(いっでんだいでん来やん家)

根占の中心部に地域を愛し、地域に愛される食堂がある。コミュニティハウス「いっでんだいでん来やん家(きやんか)※」の中でおばあちゃん達が切り盛りするカフェ「ばぁばカフェ」だ。※鹿児島の方言で「いつでもだれでもおいで」という意味
個人宅を3年間かけてリノベーションした店内は、座敷や囲炉裏が残されていて田舎の風情たっぷり。玄関で靴を脱いであがるスタイルで、思わず「お邪魔します…」と呟いてしまった。利用客も地元の高齢者の方が多いようで、ランチタイムには常連さんで席が埋まるほどだ。町の人の日常に自分がお邪魔しているような気分になり、そわそわしていると「ここは『だいでんきやん家(か)』だから誰でも来てよかとよ」と声をかけてくれた。おっと…。さすがは大先輩。お見通しのようだった。

お目当ての1日10食限定の日替わり定食をいただくことに。この日は豆乳うどんをメインに野菜の天ぷらやサラダなど南大隅町産の野菜を中心にしたヘルシーなメニュー。ボリュームはたっぷりだが優しい味でペロリと平らげてしまった。ちなみにコーヒー付きでワンコイン(500円)とお財布にも優しい。
「第三木曜日にはピザもありますよ。第二土曜日には放課後等デイサービスと連動した子ども食堂&シニア食堂も開催しています。私が作る『剛か(豪華)カレー』も人気なんです」と話してくれたのは中村剛さん。元学校の教員で、ばぁばカフェを運営している社会福祉法人栄光会の理事長だ。
ばぁばカフェは高齢者に生きがいを持って元気でいてほしいという想いで、子どもから高齢者まで誰もが気軽に集える場所として開設された。カフェの利用をきっかけに世代や町を超えて触れ合いやコーラスサークル(混声合唱団)など活動の輪が広がっており、今ではまるで地域の社交場のようだ。
それってカフェ?と疑問に思う方もいるかもしれないが、私はまさにカフェだと思う。ユネスコ無形文化遺産に登録されているウィーンのカフェ文化において、カフェとは飲食だけの場ではなく「社交や情報発信の場」だったからだ。かつて旅人がウィーン・カフェに求めたように、ここを訪れるあなたにも思いがけない出会いやインスピレーションを与えてくれるはず。

- ばぁばカフェ(いっでんだいでん来やん家)
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住所:肝属郡南大隅町根占川北1279
電話:0994−24−5608
営業日:月曜、水曜、金曜
※ランチ提供数には限りがあるため、事前にお電話で予約してからの来店をオススメします
<次回予告>
次回は9月1日(月)に「最果て愛されグルメガイド Vol.2」をお届けします。