遠く近くの風の音や海の音を聴きながら、いくつかの夢を見て目を覚ました。小さなテントの中はまだ暗い。寝袋から顔と手だけを出し、換気用の小さな窓から外の様子をうかがう。風はあいかわらず強いが、東の空はぼんやりと明るく白み始めている。



その日の天気や、体調、気分によって行き先を決める気ままな旅。次なる目的地に定めたのは、西日本最大級の照葉樹の森が広がる稲尾岳(標高930m)。肝付町・錦江町・南大隅町にまたがる広大な森はとても奥深く、瑞々しい。多くの観光客や旅人が訪れる佐多岬や雄川の滝に比べ、時間的・距離的に行く機会が限られてしまうが、海や川(滝)の風景を堪能したあとはぜひ山(森)の美しさにも身をゆだねて欲しい。





残雪が残る山の谷あいを、清流に沿って上流を目指す登山道。高度をあげるにしたがって、川のせせらぎは段々と小さくなり、やがてピトン、ピトンというかすかな雫の音に変わっていく。


森に落ちた一粒の雨が、森を潤しながら海へと辿り着く。そしてまた海の蒸気が雲や雨となって山を濡らしていく。大きな自然の流れの中に身を浸しながら、ほんの小さな存在でしかない自分と向き合うひととき。





山を下りて次に向かったのは、南大隅町の東側に位置する辺塚集落。

裏の裏は、表。南大隅町が鹿児島の奥座敷だとすれば、その南大隅町の裏にある辺塚集落は、もはや表。まさに日本の原風景といったのどかな風景が広がる。






1泊2日の小さな旅は、眼前の大きな風景(マクロ)と足元の小さな景色(ミクロ)に魅了される素晴らしい冒険となった。





